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あずさがわのじょうりゅう

山岳紀行文集 日本アルプス

小島 烏水

線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁

青空文庫

残葉の或一枚だけが、ブルブル震えているのがあった、同じ梢に並んでいる葉が、皆沈黙しているのに、この葉だけは烈しく慄えている、無論虫一疋いないのだ、末期に迫った廃葉の喘ぎは烈しかった、沼の中にも苦痛の呼吸を引いた自然の虐殺、歓喜のどよみを挙げる自然の復活は、行われている。

この辺になると、森の中に幾筋かの路が出来ている、放された牛馬どもは、無慮五百頭はいよう、六月下旬植えつけが済んで、農家が閑になると、十月上旬頃までここへ放し飼にするのだ、彼らは縦に行き、横にさまよい、森の中の木々に大濤の渦を捲いて、ガサガサひどい音をさせる、遠くから見ると、大蛇が爬っているのかとおもう、かくて青々と心まで澄んだ水の傍まで来ては、絶望の流人のように悄然と引きかえす、また来ては引きかえす、引きかえしてはまた来る。

宮川の小舎へ辿り着いた、老猟士嘉門次がいるので、嘉門次の小舎とも呼ばれる、主人は岩魚でも釣りに往ったかして戸が閉っている、小舎の近傍には反魂草の黄い花が盛りだ、日光から温かい光だけを分析し吸収して、咲いているような花だ、さっきの沼の傍で、冷たそうに咲いていた