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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁
乱石で埋まった一峰を越したことも、憶い出される、雪が氷っていたことだけが、眼に泛ぶ。
それほど霧で眼界を窄められていた、それだけまた神経が鋭く尖っていた、自分たちから一間ばかり、先へ離れて、雷鳥がちょこちょこ歩いて行く、こっちで停まれば向うでも停まる、歩けば先へ立って行く、冥府から出迎いにでも来た悪鳥のように、この鳥の姿が消えるとき、自分たちの運命も終焉を告げるように。
雄大なる白河内岳が、円く眼の前にボーッと立つ、この山を中心として、雲の大暈が、幻のように圏を描いてひろがる、日輪の輪廓がひろがって黄色い葵の花のように、廻転するかと思われた。
風が錐のように痛い、白河内岳の麓で、焚火をしていると、おくれがちの人夫も、あとから追いついて来た、その中の一人は、雷鳥を捉えて来た、少しは休んだが、風と霧と冷たいのと痛いので、落ちつく空はない、とかくに気の重い人夫どもを促して、登りかける、実を言うと、どの方面へ向いて、何処を登っているのだか、もう解らない、人夫もみんな初めての途で、茫然しているばかりだ、ともかく眼の前の大山を登った、石片が縦横に抛げ出されている、しかし石と石とは、漆喰にでも粘ッつけられたようで動かない、いずれも苔がべッたり覆せてある、太古ながらの石の一片は、苔に包まれた古都の断礎でも見るように、