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あずさがわのじょうりゅう

山岳紀行文集 日本アルプス

小島 烏水

線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁

青空文庫

峰伝いに下って、いよいよ北岳の直下まで来ると、雪田が二ツほどある、長さは二十町もあろう、その雪田の谷底に接触する尖端から、雪が融けて水になって、流れているのもある、この雪田は白馬岳のに、やや匹敵することが出来るが、厚味がそれほどないと、高頭氏は言った、それでもこんな大残雪があって見ると、日本北アルプスのみ、雪の自慢をさせて置けないと追加した。

ふと後から荷をしょって来た人足どもの、噪ぐ声がする、東の峡間に、一頭の羚羊を見つけ出したのだ、なるほど一頭いるわいと気が注くころ、中村宗義は銃を抱えて、岩蔭を岩蔭をと身を平ッたく伝わって、谷側まで下りた、円く肥えた羚羊は、キョトンとした顔をして考えている、その短い角が碧空に動かずに、シーンと立っている、晃平の采配で、人夫一同は石を上から転がす、シッシッと叫ぶものがある、ホーイ、ホーイ、ホーイと怒鳴る声がする、羚羊は石の転がり方を冷たく見て、一、二尺ずつ退りながら、大石の側へ、寄って来る、そこには宗義が先刻から、銃を取り直して待っている、しかし火蓋の切りようが、狙った壺より少し早過ぎたために、羚羊はびっくりしながらも、驚くべき速力で、向うの山へと駈け上った、そうして偃松の傾斜の中へ入って、岩を楯にまたキョトンとして、こっちを見ている、角は木の枝のようで、体は岩のよう