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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁
岩壁が流動したようである、それが例の焼岳の灰だと解ったが、咽喉が乾いて堪まらないので、上側を二、三寸掻き取って見ると、中からは綿のような白いのが、現われた、それをしゃぶりながら、焼岳を見ると、半腹以上岩壁が赭っちゃけて、あらわれている、嘉代吉と人夫も、一と息つきながら焼岳の煙を見つめている、「いいねあの煙は」「どうも天気がやかましい」「どうしてね」「あの煙が、乗鞍の方へ寝ると案じはねえだが、飛騨の方へ吹きつけてるから、ちょっとやかましいわい」私は少し心配になって来た、「そこが風の吹き廻しで、解らないところだろうよ」「いんや、西へ吹くと、雨になるだあ、測候所より確かなものだ」という。
焼岳の麓からは、灰の埃が濛々として、谷の白洲に大きな影をのたくらせながら、徳本峠を圧しかぶせるようにして、里の方へと下りてゆくのが、まだつづく、乗鞍岳の左肩に、御嶽は円錐形の傾斜を長く引いて、弱い紺色に日を含んだ萌黄色が、生暖かい靄のように漂っている、どこからか鶯が啼く、細くうすッぺらな、鋭利な刃物で、薄い空気の層を、つん裂いて、兀々とした硬い石壁に突きあたる。