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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁
流鏑馬を行ったというかなりに幅のある馬場の両側に、糸垂桜だそうなが、桜の老樹が立ち並び、蛍の青い光りが、すいすいとやみを縫って行く間を、朱塗りの楼門に入れば、五間四方あるという向入母屋造の拝殿があり、その奥には浅間造なる建築上の一つの形を作ったところの、本殿の二重楼閣が、流るる如き優美なる曲線の屋根に反りを打たせ、一天の白露を受けて冴えかえり、大野原から来る秋の冷気は、身にしむばかり、朱欄丹階は、よしあったところで、おぼろげな提燈の光りで、夜目にも見えないが、一千一百年以前からあったという古神社を継承した建築の、奥底に持つ深秘の力は、いかにも富士の本宮として、人類が額ずくべき御堂を保ち得たことを喜ぶばかり。神さびた境内にたたずんで、夜山をかけた参詣の道者が、神前に額ずいての拍手を聞きながら、「日本の山には、名工の建築があるからいいなあ」と思った。まして大宮浅間の噴泉の美は、何とであろう、磨きあげた大理石の楼閣台も、その庭苑に噴泉がなかったら、頓に寂寞を感ずるであろう。富士の白雪のもたらす噴泉美は、シャスタ火山あたりにないでもないが、富士の水の滾々として、無尽蔵なるにおよばない。