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あずさがわのじょうりゅう

山岳紀行文集 日本アルプス

小島 烏水

線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁

青空文庫

甲冑が飾ってあり、曾我の討入にでも用いそうな芝居の小道具然たる刺叉、袖がらみ、錆槍、そのほか種ヶ島の鉄砲など、中世紀の武器遺物が飾ってあるのを尻目にかけて、二階に上り、雲に包まれた富士と向き合って、ボソボソした冷飯を、味のない刺身で二杯かッ込み、番頭に頼んで、二階下の建久館なるものを案内してもらったが、奥庭に面した普通の客座敷で、ただ戸棚や、天井板などに色の黒ッぽくくすんだ、時代の解らぬ古木が使ってあるのと、そのころは一切鉋を用いず、チョウナを使って削ったのだという、荒削りのあとに、古い時代のおのずからなる持味がうかがわれただけだ。引札の説明では、建久四年、頼朝富士裾野、牧狩の時の仮家を、同家の先祖、大外河美濃守がもらい受けて住家として、旧吉田の郷に置いたのを、元亀三年、上吉田の本町に移し、慶長十五年、更に現在のところに転じたのだそうで、吉田にたびたび火災はあっても、不思議に建久館だけは、焼け残ったという話であるが、その黒く光った板だけが、古代動物の肉の腐蝕し去った後の骨枠のように、残存しているだけで、果して建久の遺物であるか否を私には極めようもないが、室には文久元年、萩園主人千浪という人が、祝大外河美濃守という建物の由来を書いた扁額がかけてあった。