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あずさがわのじょうりゅう

山岳紀行文集 日本アルプス

小島 烏水

線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁

青空文庫

空気は、この頭上を避けて通るだろう、いかなる山も、その要素では石以上の趣味がない、これは自分の石の哲学であるが、実際、神河内渓流もかようなところで、四周を包囲して峻立する槍ヶ岳、穂高山、以下の高山は奇怪の石の塊というまでで不二山のような歴史や、讃美歌を有っていない、しかし山好きな自分の眼には、ただもう日本第一の創造と見える。

生物の絶無な時分のこと、暦に乗らぬ時間を存分寝て、ふと眼を啓くと、肌の温みに氷河の衣がいつか釈けている、また一瞬間、葛城、金剛、生駒、信貴山などいう大和河内あたりの同胞が、人間に早く知られる、汚される、夭死をしてしまう、それを冷たい眼で見て、いつか有らゆる生物が造化の大作の前に俛首て来ることすら知らずにいる、知らるることいよいよ晩きは、彼らの偉大なる所以である。千年も万年も、依然として肩から上を雲に、裾から下を水に洗わせている、その下の渓谷は、父の家でない、原始の土である、綿々たる時代の人間の夢が住む、幽寂の谷である、何故かというに、善光寺街道、木曾街道、糸魚川街道などを、往き来う昔から今までの旅人が、振り仰いで見た