輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

あずさがわのじょうりゅう

山岳紀行文集 日本アルプス

小島 烏水

線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁

青空文庫

の墨が滲んで、文字が紙の上で解体するほどの霧だ。

三

眼の前には粒の細かい黒砂が、緩らかな傾斜となって、霧の中へ、するすると登っている、登山客の脱ぎ捨てた古草鞋が、枯ッ葉のように点を打って、おのずと登り路の栞となっている、路傍の富士薊の花は、獣にでも喰い取られたらしく、剛々しい茎の頭に、半分残って、根はシッカリと、土から離れまいと、しがみついて慄えている。太郎坊附近の、黄紅朱樺の疎らな短木の中を、霧は幾筋にもなって、組んず、ほぐれつして、その尖端が愛鷹山の方向へと流れて行く、振り返れば、箱根火山彙には、雲が低く垂れて、乙女峠から金時山の腰へかけて、大河の逆流するばかり、山と山との間は、幾つにも朝雲が屯ろして、支流が虚空の方々に出来る。

そのうちに、愛鷹山は洗われたような瑠璃色になって現われる。雲は東から西へと引いたように取れると一天は石灰洞のような大口を開けて、見る見るうちに次第にひろがり、碧い初冬の冴え返った空が、冷たい鯖色をした湖水のようになって、金光ちらりと黒砂に燃え落ちる、黒砂の一線、天に向って走るところ、頂上火口の赭禿げた土は、火を翳したように眩ゆくなる。