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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁

青空文庫

――かんば沢へはいったものなら、もうしようがない。

ということで、その人たちは、断念してひきあげた。しかしそれから十五六日して、ふいと兵庫は戻って来た。

少し痩せたのと、顔色が悪いのをべつにすれば、さして変ったところはなかった。ただ頭がぼんやりしているようで、失踪ちゅうのことはなにも記憶がなく、役所へ呼ばれても、満足に返答ができなかった。

――暫く静養するように。

こういって休暇を与えられたが、それからずっとひきこもって、一日じゅうなにかぶつぶつ呟いたり、夜半にとつぜん起きだしたりして、見ているほうではらはらするくらい、おちつきがなかった。

そんなふうにして年が暮れた。だがその翌年の二月、こんどはまったく無断で、ふいとどこかへ出奔した。

この二回めの失踪は百二三十日も続き、七月中旬になって、ある雨の降る早朝、住居の表に、頭からぐしょ濡れになって、茫然と立っているのを、隣家の下僕に発見された。

兵庫はひどい姿になっていた。蒼黒くむくんだ、溺死者のような相貌になり、手足は極端にまで痩せ、瞼や指趾は絶えず顫戦し、唇からはよだれが垂れた。十日ばかりは、死んだように寝こんでいたが、孫七に向って、――今後おれを外へ出さないように、厳重に見張っていて呉れ、おれがなんと云おうとも決して出してはいけない、必要なら縛って