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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁

青空文庫

そういう例はその以前にもあったが、出張した者はそのまま帰らないし、帰った者は白痴のようになって、まもなく死んだ、ということである。兵庫は初めのときかんば沢で消息を絶ち、五十日ほどして戻って来たが、だいぶようすが変っていた。公務の報告もできないようなぐあいで、休養を命ぜられたのであるが、二回めに、とつぜん家から出奔した。

そのときも自分でふらりと帰って来たが、こんどはまるで病者のようになり、躯もひどく弱っていたが、極めて奇怪な言動が多くなった。

なかでも忘れられないのは、叔父が孫七に向って、

――これからは自分が外へ出ないように、注意していて呉れ、どんなことがあっても外へ出さないように。

と云い、さらに、もし必要なときは、自分を縛りつけてもいい、とまで云ったことである。……なにかが兵庫を惹きつけていたのだ。このばあい、なにかが、というのは「かんば沢」よりほかにないが、もちろん地理的な意味だけではない、そこになにかがあって、自分で自分を制御できないほどにも、強く兵庫を惹きつけていたのである。

孫七は、本当にその主人を、縛りつけなければならなかったこともある、と云った。