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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁

青空文庫

するどく空を切る、矢羽根の音は、みな同じ方向へ飛んだ。

――おれではない。

こう気づいて、彼が、反射的に立ちあがったとき、矢の飛んでゆくあたりで、藪を走る人のけはいがし、ぞっとするような、悲鳴が起こった。……半之助はうしろの闇のなかへ、夢中で走りこんだ。武者たちが総立ちになって、なにか喚きながら、こっちへ駆けつけて来た。

境内の森は広くはない、外がわは藪と雑木林で、山の斜面へと続いている。半之助は林の下生えの中へとびこみ、身を跼めた。息が喉につかえ、心臓が狂ったように、激しく搏った。

意外に近いところで、つんざくような叫びと、木の枝の折れる音がし、

「待って呉れ、逃げはしない」

という声が聞えた。

「手向いはしない、このとおりだ」

半之助は身を起こし、山の斜面へと、音をさせないように、登り始めた。そのとき、松火を持った、武者たちが、林の中へ追い入って来、なにかけたたましく叫んだ。すると、あのきみの悪い唸りをたてて、彼の左右へ、つぎつぎと、矢が飛んで来た。

斜面の勾配は急で、若木が密生していた。

土は柔らかく、朽葉が積っているので、うっかりすると、足が滑った。