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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁
柳沢一派にしても同様である。かれらの謀計がうまくゆき、甲府侯を廃し、かれらの好ましい将軍をたてて、その権勢を持続することが、できたとして、それでどれほどのことがあるというのか。
半之助はふと停った。すぐ眼の前に、巨きな岩があり、そこから右へ、もう一つの岩との間に、細い通路のようなものがみえた。
――伏岩。
まさかと思った。しかし、いま登っている尾根の、左の峡間は「かんば沢」に、当っている筈だ。彼は迷った。
「とにかく、登り詰めてから」
もうそこに、稜線が見えていた。その上へ出れば、展望もきくし、追手の来ようによって、逃げる方向も自由になる。手も足も、抜けそうに疲れていた。激しく喘ぎ、圧迫されるような、心臓の鼓動に苦しみながら、半之助は、まもなく、その急勾配の斜面を登りつめた。すると、いきなり、向うへ、雪の宮殿が現われた。
登りつめたそこは、もちろん頂上ではなかった。あとでわかったのだが、それは甘利山の頂上尾根が、奥の山へと続く、鞍部であった。
そこに立つと、まだ月は高かった。右は奥の山の、なだらかな側面で、下は雲に閉ざされている。正面に山なみが、かなり近く迫っているが、その中に、(たぶん月光のためだろう)青白く、きらきらと光るような感じで、偏三角形の堂々とした、峰が見えていた。