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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁

青空文庫

半之助は蝋燭をつけ代えた。そして、そこにちらばっている宝玉や、同じ物の詰っているらしい革袋を眺め、さらに、明るくきらきらと、光りを反射する、洞窟の壁面を、しらべてみた。

半透明で乳白色の部分に、層をなして、水晶らしい結晶体が、露頭している。乳白色のところは、光りを受けると、内部が沈んだ金色を湛え、結晶体のところは、幾百千となく屈折した光りで、美しくきらめき、輝いた。

――かんば沢、伏岩。

土地の伝説ばかりでなく、叔父もまた、その手記で、近よってはならない、と、諄いほど繰り返していた。そして、そのことが、半之助の記憶のなかで、「信玄の石棺」というものに、むすびついた。武田家再興のために、伝来の白旗や、兜や、巨額な黄金、宝珠を填めて、どこかへ埋めた「信玄の石棺」というものに……。

「これが、その石棺ではないだろうか、この洞窟そのものが」

彼はこう呟いて、ふと息をひそめた。

毎年四月十一日の深夜、信玄の霊をなぐさめるために、旧臣たちが武装して集まる、武田八幡の社殿は、この洞窟の下に当る。すると、此処に信玄の、(所在不明といわれる)遺骸を納め、同時に再興のための財宝を隠した、と考えることは、さして不自然ではないだろう。