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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁

青空文庫

そればかりでなく、どういう仕掛けになっているのか、下で話す声が、殆んど耳のそばのように、よく聞えるのであった。

いつどこで聞いたか覚えていないが、そんなふうにして、いかがわしい覗き見を、させるところがある、ということだ。おそらくこれも、そんな目的で設けたものだろう。しかし主馬がいま、半之助に見せようとしたものは、そうした情景とは、およそかけはなれたものであった。

「上座に侍従がいるだろう、右京大夫、肥前守、なんと……」主馬が小さな驚きの声をあげた。

「見えるだろう、吉里の右にいるのは、土屋だ、老中の土屋相模守だよ」

「だって、土屋は反柳沢の」

「おれにも意外だが……」

下から話し声が聞えて来たので、主馬は手まねで、黙ろう、という合図をした。

柳沢吉里を中心に、大久保長門守、土屋相模守、水野肥前守、松平右京大夫、など、いずれも幕府の重職にある者が四人、ほかに柳沢の家老だという丸茂新左衛門と、どういう関係の者か、中年の侍が三人いた。

――なるほど、これか。

半之助は、その証拠を見せよう、と云った主馬の言葉の、正しい意味を知った。

かれらの会話は、そのままでは漠然としているが、どうやら、将軍の世継ぎを排そうという相談らしい。