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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁

青空文庫

――それは偶然すぎる。

来る途中でも、あの女のことを思いだしたし、この家の異様な空気が、そんな連想をさせたのであろう。こう考えて、彼はそっと、そこをはなれた。膳の前に坐ると、主馬も襖を閉めて、こちらへ来た。

「なんのために、あんなものを見せたんだ」

「反応があるだろう、と思ったんでね」

「それだけではわからない」

「一杯どうですか」主馬は銚子を取った。

「いや、それより話を聞こう、あとで相談がある、とも云ったようだし、なにか理由があるんじゃないか」

「安倍はむかしから、政治は嫌いだ、と云っていたね」

「今でも嫌いだ」

「それがね、嫌いでは済まなくなるんだ」

半之助は(なかば無意識に)盃を取りながら、訝しげに、眼を向けた。

「まず云うが、村田は長崎へいったね、公用を兼ねて、本草関係の資料を集めるために、そして一年ばかりで、このあいだ帰って来た、そうだろう」

「続けていいよ」

「だが長崎へはゆかなかった」

云いかけて、主馬が妙な眼くばせをした。

半之助は気づかなかったが、誰か階段を登って来るらしい。がっしりした造りなので、木のきしみはしないが、耳を澄ますと、たしかに人のけはいが、感じられた。