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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《山浦清麿(やまうらきよまろ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 頁

青空文庫

跛行と鉄車

一

『旅支度の様子らしいが、どこへお出での途中じゃな』

『はい……』と、これにも又、内蔵吉は正しく答えかねて、唯、

『江戸表まで参りまする』

と云った。

象山は、聞くと、

『ほう、江戸へか。偖は、遊学かな。いい事じゃ。若い者はどしどしと、中央へ行って、日本が今、世界の中でどう動いているか、又いかに我が国が今――又将来、多事多難な時代の潮に向いかけておるか。そういう事にも、篤と、眼を啓いて来なければいかん。餞別いたそう』

と、矢立から筆を出して、自身の扇子へ、さらさらと、一枝の桜花と、一首の歌を書いてくれた。

人みなも

咲きいづる時を

あやまらで

さくこの花に

ならえとぞ思う

跛行と鉄車

一

『今だ。咲き出づる時は今だ。おれの年頃も、世の中の黎明るのも。……何だか、そんな気がするなあ』

彼は、跛行をひきひき、峠を越え、又、峠を越えて、東へ行った。

休むたびに、象山から餞別にもらった扇子を出して見ては、

『――人みなも、咲きいづる時をあやまらで、さくこの花にならえとぞ思う』

を、何度も口で誦ってみた。

深い谷をのぞいた。そして、高い秋の天を仰いだ。

『なんだ! 意気地のない』

彼は、勃然と、自分に肚が立った。