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やまうらきよまろ
山浦清麿
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《山浦清麿(やまうらきよまろ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 頁
飛脚は、江戸へゆく途中とみえ、それを渡すと、鳥影のように、高原の道を先へ行ってしまった。
いそいで、封を切ってみると、細々と、故郷の消息が誌してある。
『……ああ、まだ母は、生きているな』
すぐ彼の眼は、潤みだした。
(――兄の真雄も無事、妻子も無事、赤岩村には、何の後顧もない。然るにそちは、何とした事だ。別所の湯町で、ふと姿を見た時、わしは泣いた)
手紙の途中で、彼はそれを拝んで、
『おゆるし下さい。おゆるし下さい』
声を出して云った。
(――だが、満照寺からの、消息に接して、わしの嘆息は、欣びに一変した。当初の志を抱いて、江戸へ立つ由。大慶この上もない。その初志を貫かねば、そちが養家を出た苦衷も、何の意味もなくなってしまうであろう。何事も、顧ずに行け。そしてよい師に就くことが肝腎だ)
と、懇切なことばの後に、江戸へ出たら、同封の紹介状を携えて、幕府のお旗本、窪田助太郎どのの門をお訪ねしてみるがよい――と結んであった。
彼は、迷いの霧を、払われた心地がした。この一人の恩人に酬いるだけでも、剣工として立つ意義がある。
『そうだ。たとえ一振でも、末代に残る銘刀と称われる刀を鍛たぬうちは、この足を、二度と、信州へは向けねえぞ』