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ねんじゅうぎょうじおぼえがき

年中行事覚書

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《年中行事覚書(ねんじゅうぎょうじおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 135,005 字 · 262 頁

青空文庫

おかしくはない。暦が字で書き印刷した本になり、どこの家庭でも見られるようになったのは至って新しいことで、もとはその暦本の数も少なく、こしらえる処が遠くに在って持って来る方法もなく、それに第一読める人が少なかった。そのためにたいていの農村では昔の仕来りのままに、月の形を見ていろいろの祭や行事の日をきめたのであった。年や月というものの境も、この満月の日だったろうかと私は思うが、その点は確かにそうだとまでは言えない。ただ少なくとも多くのお社の祭が、今でも十五日の後先になっているのは、文字を知らない人々には月の形が、一ばんわかりやすい暦だったからである。

祭には物忌といってさまざまの心の準備があり、また祭のあとの慎しみというものもあった。神に仕えるのを大きな仕事としていた時代には、祝いは一日や二日で切上げることが出来ず、それで今でも正月と盆とは何日もつづき彼岸も七日間ということになっているのである。祭の仕度が前七日からとなっていたのは、ちょうど月の形が半分ほどになった頃から気をつけ始めることで、それに対して下弦の月、すなわちだんだんと遅く小さく、再び半分の大きさになる時までが、我々の祖先の神を思う日数であったからで、この間にはまた幾つもの儀式があったのである。