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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《彼岸過迄(ひがんすぎまで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,333 字 · 385 頁

青空文庫

柴又の帝釈天の境内に来た時、彼らは平凡な堂宇を、義理に拝ませられたような顔をしてすぐ門を出た。そうして二人共汽車を利用してすぐ東京へ帰ろうという気を起した。停車場へ来ると、間怠るこい田舎汽車の発車時間にはまだだいぶ間があった。二人はすぐそこにある茶店に入って休息した。次の物語はその時敬太郎が前約を楯に須永から聞かして貰ったものである。――

僕が大学の三年から四年に移る夏休みの出来事であった。宅の二階に籠ってこの暑中をどう暮らしたら宜かろうと思案していると、母が下から上って来て、閑になったら鎌倉へちょっと行って来たらどうだと云った。鎌倉にはその一週間ほど前から田口のものが避暑に行っていた。元来叔父は余り海辺を好まない性質なので、一家のものは毎年軽井沢の別荘へ行くのを例にしていたのだが、その年は是非海水浴がしたいと云う娘達の希望を容れて、材木座にある、ある人の邸宅を借り入れたのである。移る前に千代子が暇乞かたがた報知に来て、まだ行っては見ないけれども、山陰の涼しい崖の上に、二段か三段に建てた割合手広な住居だそうだから是非遊びに来いと母に勧めていたのを、僕は傍で聞いていた。