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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像(あしのうら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 頁

青空文庫

『ないね。その時間はたった二三分だった。山鹿の家まではそこから急いで片道十分はかかる――』

『ふーん』

春生も黙ってしまったが、遉の畔柳博士も、万能探偵ではないと見えて、こんどは黙々として鷺太郎の話ばかりを聞いていた。

夏の夜だというのに、ひどく冷っとする風が吹いて来た。もう、暁方が近いらしい。

三人は顔を見合わすと、腫ぼったい瞼を上げて、

『なんだかぼんやりして来た、一と寝入りして、ゆっくり考えよう……』

と呟くようにいった春生の言葉に、黙って頷いた。

六

翌日――。

真夏の太陽は光々と輝いて、サナトリウムの全景は、まばゆいばかりの光線に満たされ、鷺太郎がベッドに寝ころんだ儘、ゆうべのことをあれこれと考えていると、ジーッ、ジーッと圧迫されるような油蝉の声が、あたり一面、降るように聴えていた。

先程、春生が一泳ぎして来る、と行ったきり、なかなか帰って来なかった。春生も矢張りあの疑問が解けずにいるらしいのだ。

畔柳副院長の姿も見えなかった。おそらく医局で診察に追われているのであろう。

この暑い日盛りを、当てもなく歩いても仕様がないと思っていた鷺太郎は、結局一日をぽかんと暮してしまった。