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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
見るものもないが、何も見られないボロボロ町が却って美しくさえあった。高峰三枝子も堀の小説を愛読し、歿後もずっとたえ子夫人とのつきあいが続いていた。この頃、お会いした香川京子も、たえ子夫人から聞くと、やはり堀の本が好きで、追分の家まで訪ねて行ったそうだ。たとえばこの二人の佳人がその例にすぎないが、作家が女の人にあいどくされるということは、どこかに通うている血が感じられるのである。その他、毎年いまだに堀の好きな田舎の山菜を根気好くおくりとどける、一女性もいた。堀が死んでいるのに八年間もそんな贈物をしているということは、どんな事がらに属するだろう、私はそこにある人のこころを尋ねて見たいのだ、人は人によってこころの細かさが違うものである。八年間も物をおくりとどけるということは、その人がそのこころに置かれた言葉をおくりとどけて来ることなのである。手紙なのだ。
×
僕は歩いてゐた
風のなかを
風は僕の皮膚にしみこむ
この皮膚の下には
骨のヴァイオリンがあるといふのに
風が不意にそれを
鳴らしはせぬか
×
硝子の破れてゐる窓
僕の蝕歯よ
夜になるとお前のなかに
洋燈がともり