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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

」

「あなたは別だわ。みんなあなたのような方ばかりだと、いいけれど……」

藤村は機嫌好く笑い、静子夫人の顔はやや疲れて柔らかい。夜はあたたかく時を刻んだ。

私は家の茶の間で、その夜も充分に飲んで来たのに、さらに今夜をしきるために、あぐらを掻いてこの夜のお終いの酒を飲んでいた。藤村の奥さんが代って見えていたが、見つめると、見つめ返してくる感じがあって、まだ若さがあるな、ああいう奥さんを老年にもつということは、まあ幸福とでもいえば言えるね、そうね、あれで十六、七くらい年が違っているが、十六、七くらい年は違ってもいいね、自分の年の半分に割ったあとの半分の年の違いでもいいな、藤村という人は小説でみんな私行を白状している正直な人なんだよ、世間では何だ彼だというが、あの人は他人の言えないこともどんどん言っている正直者なんだよ、だってあの静子夫人だってあんな年がちがっていても、宴会には代理で出しているじゃないか、悪こすい人なら若い奥さんなぞ決して宴会には出さないものだよ、あの奥さんが男の中に一人坐っていると、そこらが彼女の血色のほとぼりで火照っているくらいだよ……