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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
食えないものにぶら下がっていることの莫迦加減を、藤村は何よりも先きに見すえていた。それと同時に詩の柔らかみが二十歳頃に限られたもので、それを幾ら手強く引きつづけても柔らかい蔓が中途で切断されていることも、藤村はとうに見抜いていたのだ。
作家生活というものの最も賢明なことがらは、書くことよりも、つねにそれを断り続けることである。断らない作家には、あの男なら書くだろうという冷情苛酷な判断の下に、その仕事があつまる。どうせ間に合わせの碌な物しか書いてない奴は、書けない上に書き続けるから頭はバラバラになり、作品の腰が折れてしまうのだ。断る作家は断ることで慎重がられ用いられるに手厚い、ばかを見るのはいつも断らないでいる奴である。これらの温和しい作家は風船玉のようにひとりで、陋居にへし潰れて行った。藤村は断る側の作家であって、一字といえども卑しくしない人だと、いわれていた。実際のことでは一字といえども、ないがしろにしない作家であった。この作為の態度までが作品の手重さに影響していたが、私はこれをばかばかしく苦がり切って、断る奴を眺めていた。断らなくともよい場合にすら断る奴を、その勇気を私もまなぶべきだと思うことさえあった。