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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
「今日は新聞記者のようなことをお聞きして、たいへんご迷惑をおかけしました。」
「いいえ、なにもお話し出来ませんで、……」
「どうかお達者で。」
「はい、ありがとうございます。」
北原白秋の晩年を書くことをわすれたが、視力が減退、糖尿病及び腎炎に発する眼底出血で、駿河台の杏雲堂に入院、私も見舞に行ったが、廊下にテエブルが出ていてそこで見舞客の記帳が行われるほど、にぎやかな病院生活であった。視力はよくはならずにうすぼんやりと見える世界に白秋は住むようになり、黒い眼鏡をかけていた。永年の豪酒と仕事の山積が禍いしたと見るより外はなかった。つづめて言えば病苦で晩年は不倖な薄明生活であったともいえよう。
白秋は短冊色紙をかくときにも、奥さんがそばにいるとよく書けるという、私なぞと正反対であったが、すべて薄暗いことは嫌いで、派手であかるいことがひどく好きだった。その人が視力を失いかけていたということは、たいへん不倖なことである。しかも白秋以後白秋なく、才華の点でも、三つの転換期を持っていた。短歌に転換し童謡に転身した彼は、その先きざきでほとんど不世出のはればれしさを、抱えきれないくらい抱えこんだ詩人であった。