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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
私は何も彼も判るような気がし、彼女の死を傷んだ。聡明な女の人から愛せられることのない私や萩原に、死ぬまでついて行ったこの女の人のえらさは、やはり女としてすぐれた人であったにちがいない、バカでもすぐれて居れば偉いのだ、すぐれたバカというものは婦人代議士もおよばぬ肉体の雄弁を持っているものであった。日本でも三本の指を屈せられる詩人が最後にえらんだ女の人は、えらばれる沢山なものを持っていたことは確かである。初恋と終愛とが人間の死を飾る額ぶちのおさえであったら、かれの場合、この人こそ何にもいわないでただ愛してだけいられた平和を、かれに充分にあたえた立派な萩原の第三夫人であろう。僕もまたペンを浄めて深くいまここに悼まざるをえないのである。
かれは若い日に偶然に、この一詩をものして誰かにささやこうとしたが、ここまで来ると一篇の詩もまた先きの何十年かを予測してうたわれたように、私にはしたしく愛誦することが出来るのである。
艶めかしい墓場
風は柳を吹いてゐます
どこにこんな薄暗い墓地の景色があるのだらう。
(中略)
どうして貴女はここに来たの
やさしい 青ざめた 草のやうにふしぎな影よ