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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

嬉しく思った。

長き日の黙の久しさ 堪へ来つゝ、このさ夜なかに、一人もの言ふ

人も 馬も 道ゆきつかれ死にゝけり。旅寝かさなるほどの かそけさ

ひそかなる心をもりて をはりけむ。命のきはに、言ふこともなく

ゆきつきて 道にたふるゝ生き物のかそけき墓は、草つゝみたり

山岸に、昼を 地虫の鳴き満ちて、このしづけさに 身はつかれたり

この島に、われを見知れる人はあらず。やすしと思ふあゆみの さびしさ

静かなる ひと日なりけり。日ねもすに 心ねもごろのふみを 書きたり

あやまたずあらしめし かのをみな子も、かつ/″\ 我を 忘れゆきけむ

青空の うらさびしさや。麻布でら 霞むいらかを ゆびざしにけり

その日の帰りに、迢空は私を送るために山小屋から、雨でつぶれ川になった山道を一緒に下りた。真中が掘られた山道はがらがらの小石と泥で、飛び飛びにぬかるみを避けて歩かなければならなかった。

「あの男の歌は全部はったりですよ。はったりを取ったら何ものこりはしませんよ」

迢空はこの人には、まれに見る激しい口調でそう言い、心の憤りが足もとに勢いづいて、石を避けてがつがつ歩いたが、足もとが危なかった。