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あるかたきうちのはなし

或敵打の話

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《或敵打の話(あるかたきうちのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,276 字 · 19 頁

青空文庫

大団円

が、門番の答にも、やはり今日はどうしたのだか、まだ参られぬと云う事であった。

二人は惴る心を静めて、じっと寺の外に立っていた。その間に時は用捨なく移って、やがて夕暮の色と共に、棗の実を食み落す鴉の声が、寂しく空に響くようになった。喜三郎は気を揉んで、甚太夫の側へ寄ると、「一そ恩地の屋敷の外へ参って居りましょうか。」と囁いた。が、甚太夫は頭を振って、許す気色も見せなかった。

やがて寺の門の空には、這い塞った雲の間に、疎な星影がちらつき出した。けれども甚太夫は塀に身を寄せて、執念く兵衛を待ち続けた。実際敵を持つ兵衛の身としては、夜更けに人知れず仏参をすます事がないとも限らなかった。

とうとう初夜の鐘が鳴った。それから二更の鐘が鳴った。二人は露に濡れながら、まだ寺のほとりを去らずにいた。

が、兵衛はいつまで経っても、ついに姿を現さなかった。

大団円

甚太夫主従は宿を変えて、さらに兵衛をつけ狙った。が、その後四五日すると、甚太夫は突然真夜中から、烈しい吐瀉を催し出した。喜三郎は心配の余り、すぐにも医者を迎えたかったが、病人は大事の洩れるのを惧れて、どうしてもそれを許さなかった。