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あるかたきうちのはなし
或敵打の話
線上閱讀芥川 竜之介《或敵打の話(あるかたきうちのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,276 字 · 19 頁
それから三四日経ったある雨の夜、加納平太郎と云う同家中の侍が、西岸寺の塀外で暗打ちに遇った。平太郎は知行二百石の側役で、算筆に達した老人であったが、平生の行状から推して見ても、恨を受けるような人物では決してなかった。が、翌日瀬沼兵衛の逐天した事が知れると共に、始めてその敵が明かになった。甚太夫と平太郎とは、年輩こそかなり違っていたが、背恰好はよく似寄っていた。その上定紋は二人とも、同じ丸に抱き明姜であった。兵衛はまず供の仲間が、雨の夜路を照らしている提灯の紋に欺かれ、それから合羽に傘をかざした平太郎の姿に欺かれて、粗忽にもこの老人を甚太夫と誤って殺したのであった。
平太郎には当時十七歳の、求馬と云う嫡子があった。求馬は早速公の許を得て、江越喜三郎と云う若党と共に、当時の武士の習慣通り、敵打の旅に上る事になった。甚太夫は平太郎の死に責任の感を免れなかったのか、彼もまた後見のために旅立ちたい旨を申し出でた。と同時に求馬と念友の約があった、津崎左近と云う侍も、同じく助太刀の儀を願い出した。綱利は奇特の事とあって、甚太夫の願は許したが、左近の云い分は取り上げなかった。