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せんそういがくのおじょくにふれて
戦争医学の汚辱にふれて
平光 吾一
線上閱讀平光 吾一《戦争医学の汚辱にふれて(せんそういがくのおじょくにふれて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,206 字 · 24 頁
すると、廊下に一人の兵隊が立っていた。銃剣を下げ、一見して手術現場付近に外部の者を立入らせない警固兵であることがわかった。仰々しいな、と思いながらも、私は自分の職責から無雑作に、手術室のドアを開けた。
室内は異様な光景だった。中央におかれてある手術台を、顔の半ばをマスクで覆った白衣の外科医たちが囲んでいるのは、いつもの手術のそれと少しも変ってはいなかったが、そのまわりを数人の将校がとり巻いて、何か不思議な見世物でも見学しているような好奇心の瞳を光らし、執刀者の手元を注視している。然しまた窓際にぼんやり立っている者もいる。彼らのなかには金モールの参謀肩章をつけた将校も二、三人いた。
捕虜負傷者の手術を行うのに、これだけ大勢の軍人が立会うのは、どういうわけかと私はふたゝび不審な気を起した。しかし人垣の後から肩ごしに見るだけでは、委しいことはわからず、また私自身、基礎医学の専攻者であった故か、その頃臨床的な外科手術には興味もなかったので、一瞥したのみで引き上げようとした。
その時、執刀中の石山教授は、私の姿に気づいたのか、他の者に手術を任せてやってきた。