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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・平家物語(しん・へいけものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 頁

青空文庫

……右も左も栄花を競う権門の中にお生まれあって、望めば、得られもするお身でおわしながら』

と、つぶやいた。自分の籠居の心境に、くらべて、ひそかに、恥じるような容子にもみえる。

『天性、よほど、変った生まれつきのお人と見えますな』

清盛は、かんたんに片づけた。――父のそんなつぶやきは、ちと、あてはずれであった。時信の家庭や時子のことなどについて、もっと何か訊くものと予期していた。結婚の下ばなしに触れるものと思っていたのだ。――が、期待に反して、忠盛は、それには触れて来なかった。

『ときに。院におかせられては、近くまた、安楽寿院へ、御幸あるやにうけたまわるが』

『はい。十月十五日朝の御発輦で。……このたびは、金堂の落慶式もおありなので、伏見の離宮に、ふた夜三夜は、お泊りとか、伺うています』

『武者所も、忙しいのう。忠盛が、退いたあと、怠りはあるまいが、そちも一倍、精出して、お仕え申せよ』

『やっております。……が、何せい、北面の者どもは、こころ、平かでありません。父上を、よい例として、日ごろの不平がうずき出しています。先の例では、源ノ義家が、奥羽の反乱にむかい、数年、遠征の苦をなめて、凱旋しても、廟議で、私闘だと決められたため、恩賞も出ず、ぜひなく義家は、自分の領田の物や家産を売って、やっと、大勢の部下をなぐさめたでしょ