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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・平家物語(しん・へいけものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 頁

青空文庫

競べ馬

そしてかれの頭へ、ごしごしと、音のするばかりほおずりを与えた。

『剋った。やっと、わしは、わしの愚に、いま剋った。――平太よ、かんべんせい。彼女を、そちに撲らしたほど、わしは意気地のない親だった。おろかな男親ではあった。……だが、もう今までのような悲しみはさせないぞ。伊勢ノ忠盛の面目を、これからは奮うてみせる。責めるな。そうわしを、泣いて責めるな』

『父上。……わ、わかっています。父上の、お気もちは』

『かくても、そちは、この忠盛を、父とよんでくれるかやい』

『呼びますっ。呼ばしてください。父上っ……。お父さまっ』

『おお、おれの子よ』

『おれの、お父さま』

研がれてきた夕月の下は、藍いあおい夜霞だった。その遠くのほうで、木工助じじが歌うらしい、子守うたが聞こえていた。

競べ馬

ただ単に“仙洞”とも、正しくは“院の御所”ともよばれていた。――三条東のひろい一地域、鳥羽上皇のお住居をである。

本来。上皇とは、皇位を退かれたお方をいうのであるから、院は、御隠居所であるはずだが、白河の御代から、院政というものが始まって、ここにも朝廷とおなじ組織がおかれ、当代ではその政庁化を、一そう、明らかにしていた。