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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・平家物語(しん・へいけものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 頁

青空文庫

……で、近いうちに、奥がた様も、お子を連れて、お里方へ移られましょう』

『そうか。あれ達も、やっと心を、きめてくれたか。やれやれ、うれしいことだ』

西行は、たった一つの気掛りだった妻子のことが、一応は安心されたように、まゆをひらいた。そして、やがて、かれの仮の庵――雙林寺裏のわびたる小屋のうちへ、ふたりして帰った。

小机のまわりの歌書やら、硯などを片づけて、かれは、宵の灯火とすべき、松の木を細かに小刀で割り始めた。また、源五兵衛は、携えて来た食物を、裏の流れで洗ったり、炉へ、粥鍋を掛けたりしている。

(来るな。来てくれるな)と、西行が何度いっても、この郎従は、

(いかに、おしかりをうけても、いのちにかけ、参らでは、おりませぬ――)

と、いう男なのである。

やがて、この元の主従は、今は、道の友のように、炉辺にすわって、粥など食べ始めた。食べ終わっても、話に時を忘れている。

源五兵衛は、主人の出家した日から、自分も、武門に望みを絶ち、まだ髪こそ剃ろさないが、すでに西行が得度した寺に誓いを入れて、西住という法名までこい受けていた。そして一日も早く、西行のそばへ来て、師と呼び、西住とよばれることを、望んでいるが、西行は、