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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新・平家物語(しん・へいけものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 頁
もう三人の母だった時子は、心から、良人と、よろこびをともにして、八つになる重盛と一しょに、新しい木の香の部屋部屋や廊の間を見てまわった。
『おまえの親父は、おれの父以上、変り者だよ。こんな、よい邸宅よりも、水薬師の古家の方がよいといって、どうしても、一しょに移って来ないのだからな。……が、好きなものは、ほっておけだ。おれには、八年間もの辛抱だったが』
清盛は、いったが、しかしかれも時子も、結婚後、わずか八年ぐらいで、こんな新築の邸宅に、住む身になろうとは、ゆめ、思いもしていなかったにちがいない。
かえりみて、以前の貧苦は、うそみたいな気がするのである。家人郎党の頭数も、むかしに十倍しているし、侍女も召し使い、馬も厩に、十数頭をつないでいる。
(――なんの功があって?)
と、かれ自身、ときどき、反問してみるが、なにも、これというほどな、大功もない。
それなのに、父忠盛も、今では、刑部卿に昇っている。但馬、備前、播磨と、所領の地も、三ヵ国に在る。自分だけが、こうなのではなかった。――たとえば、源氏の六条為義なども、同様だった。昨今、洛内には、東国兵の新顔を、おびただしく見かけるが、それはみな六条の配下に増員された坂東者であり、一族それぞれ昇官を見、門戸兵営を大にして、宛として今や“都の豪族”である。