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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・平家物語(しん・へいけものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 頁

青空文庫

『お。……誰ぞ、牛車をよんで来て給もれ。……それから、ひとりは、里親の中御門殿まで、走って、この体を告げて給も。くちおしい……くちおしい』

と、叫びつづけた。

すぐ、街の牛車宿へ、ひとりは走り、べつの者は、六条坊門の中御門家へ、馳けた。

忠盛は、黙認していた。

ほどなく、牛車が来る……。半病人のようになって、かの女は、召使の背に負われた。そして、築土の外へ出て行った。

そこでも、ひとしきり、かの女の涙まじりの甲だかい声やら、経盛以下の、小さい子どもらの泣き声が、もつれもつれに聞こえていた。

それに、堪えつつ、忠盛は、清盛の腕くびを、いよいよかたく、にぎりしめたまま、じっと、二本の大木みたいに、立ちつづけていた。

空には、夕月があった。

やがて、牛車の輪音が、にぶく、重く、築土に添った道を、のろのろと、遠のいて行った。……聞こえなくなった。

『平太っ』

と、忠盛は、やっと手を離した。

くびられていた手頸の動脈が、突然、血を放たれて、どっと体じゅうに奔流した。清盛は、こめかみに筋を見せて、泣き出した。赤子のように、手放しで、泣き出した。

そのきたならしい泣き顔を、忠盛は、自分のふところへ抱えこんだ。