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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
「それは、むずかしい」
と、独り語のように呟いて、
「――が、うごかしてみせるつもりだ。こちらが真心をもって参れば、たとえ半兵衛重治が、どれほど斎藤家に対して、金鉄のごとき誼みをむすんでおろうとも」
彦右衛門はふと、自分が、蜂須賀村で説破された時の、藤吉郎の熱意と弁舌を思いうかべた。
けれど、その雄弁と、熱意とをもってしても、竹中半兵衛を、栗原山から招き降ろすことができるかどうか。
いや、下手をすれば、山を降りても、半兵衛重治の去就は、いずれへつくか不明と見るのが穏当である。織田家でなくて、かえって斎藤家の陣門へ追い込んでしまうかもしれないのだ。そういう惧れは多分にある。
現に、風説では。
彼半兵衛は、栗原山に隠れて、閑雲野鶴を友に、世外の隠士となり澄してはいるが、一朝、旧主斎藤家の危急存亡の時とあれば、いつでも、陣頭に立つであろうとの世評もあるし、――いや事実すでに先頃からの織田軍の大襲を退けたのも、彼が、陣頭にこそ立たないが、栗原山から十州の戦雲を大観して、いちいち存慮を斎藤方に通じ、軍機の秘策を授けているからである――と、真しやかに伝える者すらある。