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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

徳川家の経済貧困はいうまでもなく、上下質素が平常であったが、新鋭な武器の購入には、どんな犠牲も払っていた。富力のある武田家が、文化の移入に不利な地勢にあるにひきかえて、三河、遠江は中央に近く、海運の便もあったので、富める甲州軍の持たないものをも、貧しい徳川勢はすでに備えていたのである。

とにかく甲州方は、よほど巨銃の威力に驚いたとみえ、

「無理押しすな」

と、それ以来、攻撃手加減が変って来たのは事実であった。

或る夜は――

おどろおどろ、夜もすがら、搦手の方面で、城壁を崩すような音がつづいた。

「躁ぐに及ばぬ」

貞昌は、兵の妄動を戒めた。

夜が明けてみると、寄手の兵が、大岩巨岩を、搦手の谷へ、ただ転げ落していただけのものだった。

「もしあわてて、城の一角でも崩れたかと度を失って躁いだら、敵に虚を衝かれたろう」

貞昌は笑って云った。

――が、若い守将のその笑いかたも、一日ましに、悲壮味を帯びてきたことは争えない。それは、怒るよりも、哭くよりも、深刻なものだった。

巨銃は長く使用にたえない。小銃の弾もない。弓や矢では防ぎに足りない。――それと、もっと現実的な問題は、あと余すところ幾日かの糧だった。