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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
それが夥しいこの大兵力に接したので、
「両家の御人数をあわせれば、三万八千、これだけの軍勢がゆけば、いくら甲州兵が強かろうと、敵の二倍半、負けることがあるものか」
と、百姓町人まで力み返っていた。
けれど、城内の空気はそうでもない。必ずしも楽観をゆるさないものがある。
第一には、
(後詰が行くまで、長篠が持ちこたえていられるか?)
と、いう心配と。
第二には、
(甲軍にも、策があろうし、殊に彼の密集突撃隊と騎兵団の突貫戦法は、天下無比の勇として鳴りとどろいている。たとえ数では味方がはるかに優位であろうと、その大部分は、他国の援兵)
という質の問題であった。
わけても第一の惧れは多分にある。家康を始め岡崎の将士は、長篠にある兵数や防備の微弱を知りぬいているので、気が気ではなかった。
その点になると信長方は、いくら同盟国の誼みはあっても、他人事はやはり他人事で、自分自体ほど直接には、不安の危急を感じられないに違いない――あすは戦場へという十五日の晩などは、家々のどこもかしこも篝で赤く染められ、馬糞くさい町中を、暢気に謡ってあるく武者がいるかと思えば、女たちの酌にどよめいて、手拍子や鉢など叩きながら、家々の中や軒端で酔っている車座もある。