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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁
――追い返せ、追い返せ」
左衛門雄重は、特に、語尾をにごさぬように、云いきっていた。
十数名の股肱がつめあっていた。彼らの容子には「会っておやりなされてもよいではないか」とする色があきらかに漂っている。左衛門は、取次の者への返辞としてよりも、それらの者たちへ自分の意志を明確にしておくため、今のごとき語気を用いたものだった。
「あ。……いや、殿」
果たして、棚橋甚兵衛という物頭が、一部の家臣の意を代表して云い出した。
「ともあれ、一度ならず二度までの、羽柴殿からのお使い。さように、追い返さるるも、御狭量にとられて、おもしろくないでしょう。諾否は、もちろん御意にあること。一応、使者なるものを、おん前にお引かせなされても、よろしかろうと愚考されますが」
矢頭主膳という老臣もつづいて述べた。
「説客のことばには、まま思わぬ示唆を得るものでおざる。存分、申し分を吐かせ、その上の御賢慮なり、或いはまた御評議に附されても、決して、殿の清節にかかわることはございますまい」
久保勘次郎、その他四、五の家臣も、もっとも――と頷くような面持を示した。左衛門は、彼らがなお、首尾両端を持し、秀吉方へつこうか、家康方へ組そうか、一城の方向としてよりも、自分自分の方途として、心のうちで迷っているらしいものを見のがせなかった。