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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁

青空文庫

「また、あんなことをいって――」

於通の声は舌打ちに似ていた。

いとけない頃から、駄々をこね、慕いもし、困らせもした人なので、いまでも於通のことばつきは、余人に対する時とはまったく違っていた。容子から口振りまで、自然に幼いままになるのだった。

「いやなばあや……。何かというと、死んだ人のことばかりいうんですもの。自分の口でいえないことを、みんな死んだ人のせいにして、於通に、もういちど禅尼さんの所へ帰れというんでしょう。そんなこと、わかりきっている」

於通は、つつみなく、機嫌をわるくして見せた。――ほのかにしか明りのとどかぬ破れ窓のそばへ倚って、わざとツンと、軒端のおぼろ月を、頬杖して、見上げながら。

乳母の眼は、涙になった。針の手を止めている。

於通がふいに、しかも真夜中、ここの草屋の戸を叩いてから、もう幾日たったろう。かぞえれば六、七日でしかないが、長い気がする。於通も、乳母のお沢も。

なぜならば毎日が、こんなふうな同じことばのやり取りだからである。

お沢は、彼女が岩手の尼院を無断で出て来たということに、

「滅相もないお振舞い」

とか、

「あられもないお迷いごと」