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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁

青空文庫

千里の道を九百里まで来たものといえる。が、あとの百里に最大難関はあった。この難関にはいつか当然正面から抜くか破るか直面しなければならないものと予測はしていたが、さしかかってみると、これは想像以上手ごわいものらしい。

家康――

この名ほど今日まで、彼のあたまへ重量を感じさせるものはない。“家康”――近ごろは、眠りのまも、この二字だけは、眠っていない。

刻々の諜報は、その家康の行動を、いながら彼に明らかに知らせている。家康もまたわれに劣らぬ覚悟と悪意と全力とを傾けつつあることが手に取るように彼には見える。

自分が、ここ旬日を、坂本に送っているまに、家康は今や清洲まで大軍をすすめてきたとある。おもうにこれは、伊勢伊賀紀州の戦を蜂の巣をついたような状態において、みずからは西上を策し、一挙、京都に入って大坂へ迫ろうという颱風路を示すものであるは明らかである。

が、家康とて、その道が易々たる坦道とはおもっていない。西上までに一大会戦を期しているであろう。秀吉もそれを期す。――その地はどこか。いうまでもなく、この曠世の東西両大軍の乾坤一擲に自由なる平原は、木曾川を境する尾濃大平原のほかにはない。