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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁

青空文庫

「……わしは、この一策を、羽柴どのへ、献策してみようと思う。のるか、そるかの、奇計だが、首尾よくゆけば、徳川家康も、北畠信雄(信長の遺子)も、この手にツバして、捕虜としてみせることができよう」

勝入は、やりたいのだ。

何か、大功をたてて、聟のクロ星をつぐない、自分のカゲ口をいう者たちを、見返してやりたいのだ。

その意中が、よく分っているだけに、だれも、

(いや、奇計は、めッたに、功を奏するものではありません。危険です)

と、かれの私の感情を、いましめる者はなかった。

いったい、武人と武人の会するときは、得てして、壮挙とか決死とか、威勢のよい案に、決まりやすいものである。肚では、危ういと思っても、弱音に似た意見をのべることは、たれも好まない。それをあえていえる者は、よほどな信念家か、忠臣といってよい。

勝入の策も、その夜の密議では、帰するところ、

(それこそ、必勝の奇計)

(中入りの先陣には、ぜひ、それがしを)

と、同じあって、知らず知らず、気負い立った一決を見たにちがいない。

中入りとは、敵地ふかく潜行して、敵国の腹中から敵をやぶる戦術語である。

かつて、賤ヶ嶽のたたかいにも、柴田勝家の甥の玄蕃が、この手をやって、大敗北をまねいた先例もあったが――勝入はなんとしても、これを、秀吉に説こうとした。