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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁

青空文庫

と、口惜しがった。そして忠重の号令も行われず、全部隊は、怒濤の相をなして、進んで来た。

泡をかむ馬の顔。硬ばった人間の顔。血とほこりになった甲冑の怒濤。――それが、地鳴りをたてて、近々と、射程距離にまで迫ったとき、見すましていた堀久太郎は、

「撃てッ」

と、下知した。とたんに、ドドドッと、銃弾のひびきがすさまじい音と煙の壁を作った。

火縄銃には、弾こめ、点火のために、およそ呼吸の数で、熟練者でも、五ツ息か六息ぐらいな時間が空く。

そのため、交互射撃の方法をとるので、一斉射撃となると、やはり弾音はつるべ撃ちに敵へ浴びせかかる。

強襲の兵馬は、そのまえにバタバタ仆れた。弾けむりの間にも、その夥しさが地に見える。

「備えがあった」

「――退けや。とどまれっ」

と、味方は味方へわめいたが、怒濤は急にとどまるものではない。

久太郎秀政は、今ぞッと、ふたたび下知して、襲せてきた者へ逆よせを喰わせた。この場合の勝敗は、心理的にも、実体的にも、結果をまたず明らかである。

せっかく勝ちかがやいた本多、榊原、水野、大須賀などの諸隊も、たった今、秀次に加えたものを、自分たちの上に受けた。