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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁
留守番の一将、酒井左衛門尉忠次は、これを知ると、手を打って云った。
「思うつぼよ。秀吉以下、主力の出払った虚をついて、楽田の本営、黒瀬の砦など、片ッぱしより焼きたてて、秀吉を、立往生にさせて打ち取らんは今にあり。――各※(二の字点、1-2-22)、この忠次について、大功をたて給え」
すると、これも留守をあずかる一方の部将、石川数正が、正面から反対した。
「なに逸り給うか酒井どの、秀吉ほどな神算鬼謀に富むものが、いかに取りいそいで発向したとは申せ、あとの本営に、守りも得ぬほどな将士をのこさずに参ろうか」
「いや、いかなる人間でも、あせりを思うては、日ごろの器量も出ぬものだ。――あの、またたくまに早貝鳴らして打ち出た様子は、さすがの秀吉も、長久手の敗を聞き、狼狽したさまが、眼に見ゆるようだ。いまを外して、猿面公の尻に火をつけるときはない」
「浅慮浅慮」
石川数正は、大いに笑って、なお極力、反対した。
「秀吉の手ぐちとしては、むしろ相当な兵力をのこし、われらが、小牧の堅塁を離れて、出たところを、付け入らせるという策をのこしておるやも知れん。――この小人数で打って出るなどは、もってのほか」