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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁
その夜、信雄は落着かない気持らしかった。夜食には、侍臣、御伽衆の者、僧、日吉神社の巫女などまで交えて、賑やかに、はしゃいでいる声もしていたが、座も散って、独りに返ると、
「いま何刻か」とか、
「老臣どもは、まだ金堂から戻らぬか」などと幾度も小姓から詰侍へ問わせていた。
そのうちに、四名のうちの、滝川三郎兵衛雄利だけが帰って来た。
「ひとりか?」
と、信雄は怪しんで目の前の三郎兵衛を見まもった。
「はい、ひとり戻りました」
そういう顔いろがただの容子でない。信雄までが動悸をうけた。三郎兵衛は両手をつかえたまま顔を上げない。涙の音がした。
「ど、どうした、三郎兵衛。……筑州の用談とは、何であったのか」
「辛いお招きでござりました」
「何、おまえらを呼んで、折檻でもしたというか」
「そのような儀なれば、辛いとは申しませぬ。心外にござりまする。刃の中に坐せしめられ、心ならずも、誓書を取られました。……殿にも、お覚悟なくてはなりませぬ」
彼は、秀吉が自分たちへ計った企謀を、余すなく、信雄の前で吐いてしまった。
「いやと申せば座を外さず、その場で殺害をうくるは知れきっておりましたゆえ、ぜひなく、四名連署の誓紙に名をつらね、後――家中同座の御酒席から、隙を見て、ひとり密かに走り帰って来たような次第です。