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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
覇業の階梯を徐々に踏んで来たのである。
――が、雪斎は近年に至って、自分の教育と輔佐の任に大きな矛盾を感じだした。それは義元がいよいよ自信をもって計画を進めつつある天下統一の覇業に、何となく不安を覚え出したことであった。
(器でない。いかんせんお館はその器ではなかった)
義元の行状だの、わけて近年、著しく思い上がって来たふうのある彼をながめて、雪斎の考えは、急角度に、保守的になった。
(今が絶頂だ。彼の君の御器量いっぱいなところだ。思い止まらせねばならない)
そこに雪斎の苦しみが生じ出したのである。今を自分の世盛りと自負慢心している義元が、遽かに、中原進出の大挙を思いとまるはずはなかった。雪斎の諫言は、雪斎の老衰のせいであると嗤って取りあわない。もう天下は半ば、わが掌にあるものとしているのである。
(誰が、させたか)
義元の慢心を責めるまえに、雪斎は自分を責めた。器でない者に、器以上の大望を抱かせたものは、誰でもない、自分ではなかったかと。
(もはやお止めすべきであるまい)
雪斎はもう諫言しなかった。その代りに、評議のたびに、大事に大事を取るべく主張した。