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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
暮るる空も待ち遠く、城の狭間から首をのばしていたことか。
誰にも分る。お互いは侍だ。しかもその孤塁のうちには、友もいる、骨肉もいる。
おおウーい。
と、呼べば答えもしそうな距離なのであった。だが、援軍松平勢の縦隊は、少しも足なみを緩めなかった。
いや、部将も大将元康も、
「急げッ」
と、駒首を駆り立て、旗さし物も馬印も、低く伏せて、
「わき見すな! 真っ直ぐに。――さえぎる敵は薙ぎ捨てに、突き伏せたら、踏みこえて通れ」
ここは西へ真っ直ぐに、もう四、五里とはない、熱田街道だ。道は知れているが、進めば進むほど、何で、救援に来た目的の孤城大高を、横に見すてて駈け過ぎてしまうのか、生命は馬前に捨てるものとして来た兵たちも、大将元康の本意を知るに苦しむのだった。
だ、だ、だッ――と、前列がふいに割れた。
「すわ」
と、槍の手は槍を、鉄砲組は鉄砲を、また、手綱を、太刀のつかを、ひしと握りしめたが、
「わき見すな!」
「衝け、衝いて通れッ」
号令は、呶号となった。
まっ黒な人影が、卍になった。隊の後方の者は、通ろうとしたが、通れないのである。もう合戦は、始まっていたのだ。