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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

はっきりといっておくのがよい。――よもや左様なことはあるまいな」

「…………」

寧子は、しばらく黙っていたが、やがて、つつましい容子のうちにもきっぱりした言葉でいった。

「――ございませぬ」

「ム。ないな!」

それみろ、といわぬばかりに――また、何処かでホッとした態で又右衛門は胸を伸ばした。

「……けれど、お父様」

「何か」

「ちょうど、お母さまもいらっしゃるところですから申しあげますが」

「ふム。いうてみい」

「寧子からも、お願いいたしまする。わたくしのようなふつつか者でも、木下様が妻にお望み下さるならば、どうぞ、木下様へおつかわし下さいませ」

「な、なに?」

又右衛門は、舌ももつれるほどな狼狽につつまれた。

「これ、寧子」

「はい」

「そなた、正気でいうのか」

「女子の生涯の大事、かりそめには申されませぬ。自分の口から申すのは、いかにお父様にでも、母様にでも、恥かしゅうてなりませぬが、わたくしの大事は、御両親様にも大事と、面を冒して申しあげました」

「ふ……ウむ」

呻いたきり又右衛門は、わが娘の姿に眼をすえていた。

――偉いッ。

藤吉郎は、心のうちで、寧子の立派な云い方を褒めていた。