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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
「笊はお貸し申しておきますゆえ、お勝手へ置いて参ります。後でまいちど、清水で晒して、召し上がって下さいませ」
「ごんぞ、ごんぞ」
「お召使は、見えませぬ」
「ごんぞは見えませぬか。では下婢は」
「針を持ったまま、勝手元の部屋で寝てござりまする」
「やれやれ、主人が眠ると、猫までが眠る。では、笊は後からお返しに遣わします。御主人にも、よしなにお伝えを」
口愛想はよいが、物臭く、腹這いのまま、奥から呶鳴っているのであった。
城内ではとかく、白眼視されているが、この桐畑の組屋敷の近所界隈では、彼の人気は至って良かった。それも主人よりは細君のほうに良く、細君よりは娘子供になお良かった。
しかし、きれいな娘を持つ家庭では、独り者の彼に対して、相当周到な警戒をしていた。退屈で困っています。少し話しにいらっしゃいませんか――などという誘いを、娘の親の前でも、平気で彼はいうからであった。
退屈といえば、この五、六日、彼は体をもてあました。ちと遠国まで供を申しつける程に、旅支度いたしておれ。十日以内に出発の沙汰いたす。それまでの間、休養して、余り外出はすな。また、他言もならぬことは改めていうまでもない。