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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
「あれなら世帯も好う持とう」
などと人眼を忍ぶ急場にも、そんなことまで考えたりした。
彼女の母の呼ぶ声がする。彼女の返辞は、垣の外から覗いている藤吉郎の耳にもひびいた。藤吉郎は、歩き出した。往来を誰か人が通って行ったからである。
「よく働く、そして柔順だ。あの女なら、中村の母にも気にも入ろう。百姓していた姑と、わしの母親を、粗末にするようなことはあるまい」
彼の恋は、煩悩のうちにも、遠大な考えまでした。
「貧乏に耐えよう。虚栄には囚われまい。良人は大事に、良人の陰で助ける女になれよう。おれの欠点も、ゆるすだろう」
何もかもよく考えられる。
第一眉目も麗しい。
あの女性を措いては、おれの妻はない。そうまで、思い込んだ。ひとりでに胸が膨らんでくる。大きな動悸を打っているのだ。――ふウッと、星を仰いで大きな息をついた。気がついてみると、組長屋の一郭を一まわりして、またいつのまにか寧子の家の前に出ているのだった。
ふと、垣の中に、寧子の声がした。水桶を持って、井戸のほうへ行く姿が、夕顔の蔓のすき間から見える。こぼれそうな星明りだし、夕顔の花明りに、その横顔も白々と見えた。