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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
実際にまた考えてもいなかった。
彼のねがいは、人並に人たろうとすることであった。彼の誓いはいつも現在の職分に忠実に、草履取となれば草履取になりきり、お台所方に勤めればお台所用人になり切り、お厩士となればお厩者になり切って、その職責を全うするほか他意のないことであった。
その代り彼は、何を勤めても、なくてならない人間になっていた。ずいぶん誹謗もされ、あぶない奸計にもかかりやすい彼であったが、いよいよとなるとやはり、
(なくてならない彼)
であるその根を、今は清洲の重臣でも、容易く抜き捨てることができなかった。それにまた信長が、近頃は彼の才幹を認めだして来ているので、彼の位置は、何といっても相変らず低いものだったが、そういう方の憂いはまずなく、安心して御奉公に尽し得られるという今日の礎はできていた。
――だからこの折に、寧子との結婚を機に、中村の里から母を迎えてもよいのであるが、浅野家のほうでは、嫁にはやれぬ娘とのことで、その結果、入聟というので話はできているのである。その点からも、今はまだ母を呼び迎える時期ではなかった。
それに、祖先はとにかく、母は百姓である。